カルチャー探訪 Vol.3:ショーの名前は、人の名前——スタージスに立つ13の小さな王国
第86回スタージスで開かれる13のカスタムショーは、ひとつひとつに主催ビルダーの名前がついている。メーカー公認の逸脱とはちょうど逆側にある、承認のいらない場所の美学について。
この記事の注目ポイント
- 第86回スタージス・モーターサイクル・ラリーは2026年8月7〜16日開催。会場のひとつバッファロー・チップのカスタムシリーズは13のバイクショーで構成され、各ショーの主催と審査を個人ビルダーや専門誌の編集者が実名で担っている。
- 8月14日に贈られるカスタムシリーズ・キング・アワードのトロフィーは、FXRショーを主催するスタージス・カスタム・サイクルズのジョー・ミエルケによる手作り。ラッツ・ホールのテッド・スミスも自身のショーのトロフィーを自らデザインしている。
- 展示企画「モーターサイクルズ・アズ・アート」は8月8〜14日にプログレッシブ・ガーデンズで開催され、入場無料。カスタム車と絵画・写真を並置する構成で、写真家マイケル・リクターが長くキュレーションしてきた。
前回はメーカーが公認したカスタムの話を書いた。ブランドが自分の名前を貸して、逸脱をそのまま作品に変えてしまうやり方。あれはあれで美しいと思う。でも今回書きたいのは、ちょうど反対側にあるものなの。誰の公認もいらない場所。というより、承認をもらう相手がそもそも存在しない場所。2026年8月7日から16日まで、サウスダコタ州スタージスで第86回スタージス・モーターサイクル・ラリーが開かれる。1938年に地元のインディアン販売店を営んでいたパピー・ホールが始めた小さな集まりが、いまでは世界最大のバイクの祭りになっている。
会場のひとつ、バッファロー・チップで開かれるカスタムシリーズの日程を眺めていて、ひとつ気づいたことがある。ショーの名前の横に、必ず人の名前が書いてあるの。8月7日のハイオクタン・バイクショーはチャーリー・ハンフリーズ。8日のデヴィッド・マン・チョッパーフェストはチョッパーズ・マガジンのケイリー・ブロベック。同じ日のスクールズ・アウト・チョッパーショーはケヴィン・ハナマン。9日のFXRショー&ダイナ・ミキサーはスタージス・カスタム・サイクルズのジョー・ミエルケ。10日のグローバル・ゲットダウンはダンワース・マシーンズのケヴィン・ダンワース。11日のスポーツスター・ショーダウンはレッドスレッド・カスタムズのパット・パターソン、同じ日のバイカー・ベルズ女性バイクショーはレネゲイド・ベイブスのケイト。13日のラッツ・ホールはテッド・スミス。全部で13のショーがあって、そのひとつひとつに主催者の顔がついている。
それにしても、ジャンルの切り方が細かすぎておもしろいの。FXRだけのショー、スポーツスターだけのショー、エボだけのショー。9日にキャンプ・ゼロで開かれるマーシャン・マシーン・コントラプション・ショーにいたっては、マーシャン・マシーンの面々が仕切る「珍妙な機械」の会だし、10日のエボ・エンタングルメントはケニーズ・ハウス・オブ・ホースパワーのケニー・マクレイン、12日のプリティ・ファストはスライフォックス・パフォーマンスのアレックス・フォックスが仕切っている。気づくと「バイク全般のショー」というものが、ほとんど無い。これって裏返せば、この街には一つの車種だけで一日ぶんの見応えを作れるだけの数と密度が集まっている、ということだよね。カスタムの世界を外から見ていると、どうしても一枚の大きな絵として語りたくなるけれど、中に入ると絵はこんなに細かく割れている。その割れ方そのものが、わたしにはこのシーンの豊かさに見える。
これ、よく考えるとかなり変わった構造だよね。普通、大きなイベントの中の催しには運営会社の名前がつく。でもここでは、屋号と個人名がそのまま看板になっている。チョッパーの人はチョッパーの、FXRの人はFXRの、そういう狭くて濃い王国が13個並んでいて、それぞれの王が自分の基準で「今年のいちばん」を決める。トロフィーまでそう。ラッツ・ホールのテッド・スミスは自分でトロフィーをデザインするし、8月14日に贈られるカスタムシリーズ・キング・アワードは、FXRショーを主催しているジョー・ミエルケの手作りなの。作る人が、作る人を讃えるための物を、また手で作っている。この循環の閉じ方が、わたしはすごく好き。
同じ期間、8月8日から14日まで、会場のプログレッシブ・ガーデンズでは「モーターサイクルズ・アズ・アート」という展示が開かれている。カスタムバイクと、それに対応する絵や写真を並べて見せる企画で、長いあいだ写真家のマイケル・リクターがキュレーションしてきた場所。入場は無料。ここからはわたしの見方だけど、50万人規模の祭りの真ん中に無料の展示室があって、その隣で13人の個人が自分の名前でショーを開いている、という配置がこの街のぜんぶを説明していると思う。ラリーの話になると集まる人数の大きさばかりが語られがちだけど、あのシーンのエネルギーを本当に作っているのは、たぶんこの粒の細かさのほうなの。ブランドが与えてくれる承認の代わりに、隣の作り手が渡してくれる手作りのトロフィーがある。どちらが上という話じゃなくて、カスタムという文化には両方の回路が要るんだよね、って感じ。もし行く機会があるなら、大きなステージより先に、名前のついたあの13の小屋を覗いてみてほしい。
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