カルチャー探訪 Vol.1:2026年のカスタムシーンを読む——バイクは今、どこへ向かうか
「光沢」から「手仕事の痕跡」へ——2026年カスタムシーンの美学はどこへ向かうのか。ファッション業界出身のカルチャー編集者が、バイクと美の交差点を読み解く創刊号。
この記事の注目ポイント
- 2026年のカスタムは、EVの造形自由度と旧車レストモッドの手仕事が、どちらも「作り手の美学」でつながる。
- 完成品の光沢だけでなく、素材、溶接、制作途中を見せる表現が、カスタムの価値を物語として伝える。
ファッション業界にいたとき、バイクカルチャーのビジュアルの強さに惹かれた。ある展示会で偶然目にしたカスタムバイクが、それだった。言葉もなく、そこに置いてあるだけで「誰かの美学」が全身で感じられた。カスタムバイクを見ていると、それを作った人の美学がそのままそこにある。言葉がいらない表現で、それがわたしには刺さったの。ファッションの世界でも「言葉がいらないデザイン」を追いかけていたから、バイクカルチャーの持つその力は、すぐに理解できた。「カルチャー探訪」を始めるにあたって、2026年のカスタムシーンがどこに向かっているのかを最初に書きたい。あのシーンのエネルギーは、今どこにあるのか。
ビジュアルの強さという観点で今のカスタムシーンを見ると、大きな流れが見えてくる。ここ数年で一番変わったのは「素材の見せ方」だと思う。以前のカスタムカルチャーは、クロムメッキと光沢塗装が主流だった。ガンメタルにしても、パールホワイトにしても、「輝き」が価値だった時代があった。でも今、作った人の美学はまったく別の方向に動いている——ラフネス、テクスチャー、不完全さの意図的な演出。溶接跡をわざと露出させる、錆びた鉄素地をクリアコートだけで仕上げる、カーボンとアルミの異素材を対比させる——そういう「手仕事の痕跡」を美学として見せるスタイルが主流になってきたんだよね。ビジュアルの強さの源泉が、「完成の美しさ」から「制作の正直さ」へシフトしているって感じ。これはファッション界で起きた「ノームコア」や「ヴィンテージ回帰」と同じ流れだと思う。
あのシーンのエネルギーを言葉にするなら、「引き算の美学」。インスタグラムの影響は明らかで、バイクがフォトジェニックであることが一つの価値評価軸になったのは事実なの。でも面白いのは、そのSNS文化が「派手さ」ではなく「本物らしさ」を強化した点。カスタムビルダーのワークショップの写真、部品が並んだ作業台、製作途中のフレーム——そういうビハインド・ザ・シーンのコンテンツが高い評価を受けるのは、「誰が作ったか」「どう作ったか」という物語への関心が高まっているからだよね。ビジュアルの強さはそこからも生まれる。完成品だけがカスタムバイクじゃない。作った人の背景まで含めて、一つのビジュアルとして成立しているの。ファッション業界でいう「ブランドストーリー」に近い感覚だと思う。
2026年のトレンドとして、わたしが注目しているのはいくつかある。一つはスクランブラースタイルの進化。オフロードと都市の中間にいるようなビジュアルは5年前からあったけど、今は素材選択とカラーリングの洗練度が全然違う。作った人の美学が、以前は「武骨さ」に偏っていたのが、今は「エレガンスとの調和」に向かっている感じがするんだよね。もう一つはEVカスタムの台頭。電動バイクのボディはエンジンレイアウトの制約がないから、造形の自由度が高い。ビジュアルの強さで言えば、EVカスタムはガソリン車にはできない形を作れる可能性があるって感じ。まだ主流じゃないけど、あのシーンのエネルギーがEVに向いてきているのは確かだと思う。コンクール系のイベントでもEVカスタムが受賞するケースが増えてきている。
「カルチャー探訪」では、国内外のカスタムシーン、バイクとファッションの交差点、インフルエンサーとブランドの動き——そういうものを感性的に、でもちゃんとした取材を元に書いていくつもりなの。スペックの話は他の連載に任せる。わたしが書くのは、バイクという乗り物が持つビジュアルとカルチャーの力。作った人の美学が伝わる記事を、書き続けていきたいと思っています。
カスタムシーンを見ていると、いつも思うことがある。バイクは量産品として作られるけど、カスタムによって「一台しかないもの」になる。その過程に、ものを作ることの本質がある。作った人の美学が、ビジュアルとして現れる——これはファッションのオートクチュールと同じ構造だよね。わたしがカスタムバイクに惹かれるのは、そういう理由なの。「誰が作ったか」が「何を作ったか」と同じくらい重要な世界。あのシーンのエネルギーはそこから来ている。この連載を通じて、そのビジュアルの強さを言語化していきたいと思っています。次号は国内の注目ビルダーにインタビューする予定なの。楽しみにしていてください。
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